緊張の第一歩
ある夏、クウェート発アブダビ経由でイエメンの首都サナアに向かっていた私は内心ドキドキしていた。同じ便に乗ってた唯一の日本人商社マンが声かけてくれたり、ガルフ航空のイギリス人フライトアテンダントが温かい笑顔でワゴンの温かいデザートを勧めたりと何かと気を遣ってくれるけど、別世界のイエメンへの一人旅、かなり緊張。空港に着いた時、思わず引き返して今乗って来た飛行機でアブダビに戻りたくなっちゃった。ともあれ来てしまったんだからしょうがない。「困った事があったら連絡して下さい」と言ってくれた商社マンにお礼を言って別れ、緊張の一歩を踏み出した。
ヘジャーブの出番です
到着前の機内の洗面所でささっと身にまとったのはアバヤとヘジャーブ。後にも先にも私がこの姿で旅したのはイエメンだけ。感想? 下に着る服を選ばないアバヤはコート感覚で便利だし、ヘジャーブは周囲の視線を遮ったり
逆に見たくない物を見ずに済ませるのに最適。最後にサナア空港を飛び立つ前にヘジャーブを外した時、髪をさらけ出すのがとても恥ずかしく感じられた。そういえば
あの日本人商社マンもイエメンに出張する度に包み隠された女性の髪が無性に気になる、って言ってたっけ。フランスでムスリム女子学生の頭のスカーフを強制的に廃止させてるけど、ムスリム達が猛反発してる気持がよくわかる。見せて恥ずかしい物はむやみに他人に見せたくないのよ〜
コブ取り爺さんだらけ
イエメンではコブ取り爺さんが大勢いる。というのは昼間から道端でたむろしてカート(覚醒作用のあるアカネ科の木の葉っぱ)を頬いっぱい噛んでる男性達の事。山で地元の人が私達をお茶をふるまってくれた時に新鮮なカートを私にもしきりに勧めてくれたので葉っぱを一枚ちぎって噛んでみた。味はちょっと苦くてツバキの葉でもかじってるみたい(噛んだ事ないけど)だったかな。
もうお帰り?
最初の緊張がウソのようにイエメンは楽しかった。途中で楽しい道連れもでき、サナアから少し離れた山の中腹の村を訪ねたり、庶民的な食堂でイエメン人に混じってアラブ料理食べたり、市場でターコイズブルーのアクセサリー買い込んだり、屋台で歯が溶けそうなほど甘いミルクティー飲んだり、かなりパワフルに過ごしてるうちにあっという間に出発の日。建築研究のため長期滞在してる東京大学の学生さんがとても羨ましかった。
イエメンに売られた女子中学生
そもそも私がイエメンを訪れたくなったきっかけはテレビで見た古代摩天楼の幻想的風景ではなく、"SOLD"という衝撃的な実話に基づく本だ。「こんなイエメンてどんなところ?」と自分の目で確かめたくなった。この本はイエメン人の父とイギリス人の母の間に生まれ、ごく普通の女の子としてイギリスで育った15歳のザナと14歳のナディアが父親とともに1980年の夏休みにイエメンに遊びに行った事から始まる苦難の8年間を綴った物語。