昼は隠れて… 熱風のアブダビ
その年、私はアラビア語の勉強のため7月下旬からの1ヶ月を灼熱と熱風のアブダビで過ごした。暑いの大好き、湿気だって日本で慣れてるからアブダビも大した事ないだろう、な〜んて甘かった。暑さはともかく、真っ向勝負で照りつける太陽に閉口。日焼けはお肌の大敵、ってわけで、午後1時にレッスンが終わってからは滞在先のビーチロターナ・ホテル隣接のアブダビ・モールで夕方までじっと隠れてる毎日だった。
暑くて屋外の娯楽が限られた湾岸では 別に買物しなくても毎日の生活に巨大ショッピングモールが欠かせないのを実感。またモールは社交の場であり、男女の出会いのチャンスの宝庫でもあるけど、この話はまた別の機会にね。
夜中のウォーキング
アブダビ滞在中、私はほぼ毎晩コルニーシュなどにウォーキングに出かけていた。ホテルから片道約30分。夜間はさすがに熱風も控えめで、静かな海沿いの道を歩くのは何とも気持よかった。夜の10時半過ぎに人もまばらな(車は絶えず走っている)通りを女性一人で歩くなんて日本じゃかなり勇気のいる事だけど(小心者なので…)治安が抜群にいいアブダビでは全く問題なしって感じ。コルニーシュの一角ではそんな遅い時刻にもかかわらず「さ〜 今からバーベキュー開始」とハイになってる現地の人やインド人達のグループをよく見かけた。みんな何時に寝てるのかな?
ホテルへの立入禁止?!
治安のいいアブダビで逆に怪しげに見られたのは私の方? ある夜、私はピンクのポロシャツとジーンズ、赤いスニーカーでいつものように颯爽とウォーキングに出かけ、そしていつものようにどろどろの大汗かいてビーチロターナ・ホテルに戻って来た。すると!
セキュリティーが すーっと寄って来て部屋の鍵を見せろと言う。「何かあったの?」と聞きながら鍵を見せると、彼は私の質問に答えず 頷いただけで立ち去って行った。
いったん部屋に戻ったものの「不審者チェックとはいえ、あの命令口調と威圧的態度は エグゼクティブ・フロアに1ヶ月近くも滞在しているお客に対してあんまりなんじゃなーい?」と怒髪天を突く(?)状態になった私。ロビーに舞い戻って先程の大男の胸ぐらを掴んで(やりたかったなぁ。実際にはやってませんよ、もちろん)「私のこと不審人物と疑ってたの?」抗議。その後ホテルのマネージャーが平謝りしに来たんで私は振り上げたこぶし(?)をおさめ… 確かに東洋人女性の宿泊客は全く見なかったし
私もウォーキングの後で汗まみれだったけど、よれよれの格好でロビー歩いてる西洋人もたくさんいたのに〜 後で現地の友人に聞くと一部のアジアの女性達がホテルでこっそり行う"商売"が近年アブダビ大問題になっているんだとか。もっとも私の場合は汗まみれの怪しげな東洋人って思われたのかも?
もしアラブにあまり興味無い人に旅を勧めるとしたら 私は迷わずアラブ首長国(UAE)、特にドバイに送り出したい。嬉しい事に私の周りでも最近はドバイ・ファンが増えつつある。治安はいいし、物価も安いし(最近また巨大ショッピングモールが完成)、ホテルもエステもレストランも充実しているし、砂漠もあればビーチ・リゾートもある。早くから観光に力を入れて来たドバイは イスラムの香りと湾岸諸国随一の都会的雰囲気がうまく調和し、女の子同士でもカップルでもストレス無く歩ける街だと思う。
一方で現地の人々は至って保守的で、欧米女性がタンクトップ姿で買物する横をアバヤに身を包んだ女性達が通り過ぎて行く。夜、カフェに行けば座っているのはカンドーラを着た男性ばかり。映画館も男性だけのグループかファミリーがほとんどで「現地女性はどこにいるの?」って感じ。いい大人になっても親の目を盗んでこっそりとデートしてるし、結婚にも親の意向がかなり反映される。
首長国の人口400万人の大部分は外国人で自国民は10パーセント足らず、つまり40万人。社会が小さいほど人間は近所の目=世間体を気にするから、彼らが保守的なのもわかる気がする。ドバイが"自由"なんて外国人だけ」と友人が漏らした事がある。気の毒だけど、私はそんな首長国の人々の"変わらない"(変われない)ところが大好き。
御殿で晩餐会
さて、その晩餐会ならぬ夕食は優雅なヨーロピアンスタイルのダイニングルームその1(ダイニングルームその2もある。さすが豪邸…)で始まった。映画に出て来るハイソな食事シーンのように大きく長いテーブルで、端の人同士が話すにはマイクが必要かも…
:D ケチを嫌うアラブ人、その夜のご馳走はまさに晩餐会並み。品数だけじゃなく、量も半端じゃない。食事の後は床に座って寛げる応接室その1(応接室その2その3もあるからね〜)でフルーツとデザートでフィニッシュ。首長国滞在中行ったどこのレストランよりも豪華で美味しい食事だった。
第三世代
シャルジャのプリンスに会った事がある。2004年に逝去したザーイド前大統領を首長国建国第一世代、ドバイのマクトゥーム家出身で首長国全体の首相のシーク・モハメド(1949年生まれ)を第二世代と称するなら このシャルジャの20代の王子は第三世代。握手した手は女性のように滑らかで話し方も表情も穏やかそのもの。第一・第二世代の"野武士"的雰囲気が全く無く、カンドーラを着てなければイギリスのプリンスみたい、と思った。素敵でハンサムな紳士だったけど、私はやっぱり首長国の人々独特の粗削りで野武士的なところが好き〜 ところで亡くなったザーイド前大統領は名君として首長国の発展に大変貢献し、アブダビに住む私の友人も「彼を尊敬している」と胸を張って言っていた。実際にアブダビに滞在して私が感心した事の一つは、木々を愛するザーイド前大統領が都市の緑化に力を注いでいた事。あの過酷な気候で緑を育てるのには大変な労力とお金がかかるけど、アブダビの街路樹はスクスク伸び、空から見ても道を走っていてもこの国の豊かさがあらためて実感できる。
庶民の足・アブラで 向こう岸に渡る 人々と… |
アブラの上で 爆睡する人 |
近未来ビルのショールーム
今、湾岸諸国は競って近未来の街を造ろうとしていて、現在そのレースで一歩リードしているのがドバイ。写真左は1000億ディラハム(約272億米ドル)かけて砂漠の真ん中の10キロの直線に35のホテル(29200室)、1500のレストラン、100の劇場、それにショッピングモールなどを作ろうというバワディ・プロジェクトのモデルで、2006年5月に正式に発表された。目玉は6500室という世界最大のホテルAsiaAsiaで、2010年に完成予定だとか。現在年間600万人が観光で訪れるドバイ、ますます"観光力"がパワーアップしそう。