面積11,430万平方キロ(秋田県より少し小さい)
人口86万3000人
一人当たりGDP 36,476ドル(日本は36,187ドル)
2007年、断食月(ラマダン)明け初日の夜、ドーハの代表的ショッピングモール・シティセンターでは、たった1カ所だけ開いている入口から強行突破を試みる汗臭い群衆(全員男性)とそこに立ちはだかるガードマンの攻防で祝日気分も吹っ飛ぶ物々しさだった。その日の夕方カタールに着いたばかりの私が恐る恐る喧騒の震源地に近づいてみると貼紙が。「イード(祝日)の間、午後8時まで当ショッピングモールには家族連れしか入れません」と書いてある。ガードマンに押し戻されていたのは全員単身で出稼ぎに来ているインド、パキスタン、バングラデシュ等アジア系の男性達。民族服を着た、一目でカタール人とわかる男性は男同士の来館・独身でもフリーパス。彼らの国だから当然かな・・・
で、単身&アジア系の私はというと、喧騒を傍観していたらガードマンの方から手招きして
あっさり関所クリアー。女性の場合はOK、さすがアラブの国!
でも祝日で仕事も小規模のお店も休み、故郷にも帰れず、住環境も合宿生活並みで行き場のない(だから海岸沿いは彼らで黒山状態)出稼ぎ住民、ショッピングモールで暇つぶしもできないとは気の毒。と同情しつつ中に入ると何故入館制限が必要なのか即納得。とにかくメチャ込みなのだ。垢抜けない(失礼!)店のラインアップにもかかわらず、ドーハ中の家族連れが集結しているのでは、と思う程。スケートリンクは子供達で盛況、そしてリンクを見下ろす吹き抜けの上層階の手摺りは子供達が滑る様子をボーッと眺めるその100倍位の大人達でびっしり!
カタールからの大脱出
初めて訪れたカタールだけど、実は予定を切り上げて1日早く脱出してしまった。到着した日に行ったショッピングモールがあまりに貧相だったのと その帰りに何台もの車から不愉快な言葉をかけられたり執拗なナンパに遭い、「ドバイに早く戻りたいよー」と部屋に戻って決心。幸いカタール航空もドバイのホテルも予約が取れ、ドーハのホテルも変更を快諾してくれて脱出成功!
別の湾岸諸国の友人に話したら「カタールはベドウィンが多いから外国人女性に対して不躾な言動してしまうんだよー。でもさぁ、長くて綺麗な髪は確かに彼らにとってセクシーだからねぇ」との事。次回はヘジャーブ被らないと?!
パスポートはいくら?
カタールと言えば豊富な資金を元に有能スポーツ選手を高額で"輸入"、厳しい条件を課す事無く国籍を与えている事で有名。2006年ドーハで開かれたアジア大会ではフィナーレのサッカーで地元カタールが優勝して大いに盛り上がったけど、勝利の原動力は輸入した選手達。2007年7月にベトナムで行われたサッカーのアジアカップの代表チームにも外国人混成部隊(全員カタール国籍ですが)で臨んだものの、結果は日本と同じ組予選リーグで1勝もあげられず最下位で敗退。
左はそれを揶揄し、インターネット上に出回っている風刺画で、カタール人がアフリカ出身の即席カタール国籍のサッカー選手3人に対して「お前達みんな、新しいパスポート(カタールのパスポート)を返してアフリカに帰れ!」と言っている。現在カタール代表チームには少なくとも8人の輸入選手がいて、うち5人はアフリカ、2人はシャム地方、残る1人は南アフリカ出身。さらにカタールのクラブでプレーしているブラジル人のRodrigo
Gral(ロドリゴ・グラウ)に国籍を与えようとしているらしい。
八角形のカラー写真
ドーハの街を車で走っていて一番面白かったのはドライバーへの注意を促す看板に文字だけとかイラスト入りではなく、本物のカラー写真が使われている事。そしてなぜか八角形。シートベルトを締めようとか運転中は携帯電話使ってはダメ(500カタール・リヤル=約15000円の罰金)、とか内容も被写体はさまざまで、交通量の多い信号機の下にやたら取り付けてある。文字も多色刷りで、経費のかかる日本ではあり得ない豪華な看板。逆にこの凝った看板に気を取られて…なんて無いかな?
看板と言えば空港に繋がる道路のビルにはハリーファ首長様が手を挙げて微笑む巨大な看板も… バーレーンのビル群でも首長様や皇太子の特大の笑顔を幾つも見た事あるけど。
カタール
忙しく箱作り
さすが「日の出」の勢いのドーハ、一等地は建設ラッシュ。面白いのは高層ビルでも防護幕を張らないようで、作業の進捗状況が外から覗けると同時に作業員達が落ちないのかと心配になる。ドーハ駐在の同僚の話では彼の3LDKのマンションの家賃は月35万円もするそう。それでも車で走っていると都心からほど近い場所に広大な空き地やテント群を見かける。
砂から抜け出た成長株
世界一豊かなサッカーリーグ
下の写真はカタールの友人が送ってくれた、"世界で一番給料取り過ぎのサッカーリーグ"=カタールというビデオの3シーン。白熱した試合中、グラウンド内に美女を伴ってストレッチリムジンで颯爽と乗りつけプレーに加わる選手、という設定。いかにもお金持ちの国! そういえばカタールのナショナル・チームは一時期あのトルシエ監督が指揮を執ってましたね。このおふざけビデオには他に"最もよく統率されたリーグ"=ドイツとして 計ったかのように等間隔に広がってピッチを走る選手の映像とか、"最も虚栄心の強いリーグ"=イタリアとして 負傷した選手に担架より先にメークさんが駆け寄ってドライヤーで髪の乱れを整えるシーンなども登場、結構笑える〜
日の出の勢いのカタールでは物価も給料も近年急上昇。ホテルも同様で、5星とは名ばかりの古びたアメリカ系メジャーホテルでも1泊3万円以上、旅行するには現在湾岸諸国で最も割高な目的地となっているようだ。画期的なのは入国査証。日本人の場合、空港到着後入国審査場で取れ(別カウンターに行く必要無し)、しかもクレジットカードで支払い可能。こうなるとビザなんて要らないのでは、と思ってしまうけど…
知る人ぞ知る翼
関西空港にも乗り入れているカタール航空。日本ではまだ知名度が低いけど、記憶では90年代後半には既に「サービス抜群」として海外では定評があった。私も大好きなエミレーツより更に最新の機内設備を誇っているとか。一度乗ってみなくては… ところで関西空港就航にあたって日本支社長に取材を申し込み、OKの返事だったんだけど、その結末は… 内緒! 日本支社、なんだかアラブ的〜とだけ言っておきましょう。
急いで召し上がれ
粋なシェフの格好をしたクルーが挨拶に来るガルフ航空や総合力に定評のあるエミレイツ航空、ソフト面でかなり見劣りする(失礼!)クウェート航空同様、カタール航空のファーストクラスでも1時間前後の超ショートフライトで温かい軽食をサービスしている。ムスリムのお客さんは飲まないけど、シャンペンやワインも搭載している(クウェート航空は除く)。盛りだくさんぶりに こっちが”ちゃんとサービス終わるのかなぁ”と心配になるけど、クルーは涼しい顔して仕事をこなし、着陸前に自分達もギャレーの中でサモサをぱくついてたりする余裕ぶり。
温かい食事はサンドイッチなどのコールドミールに比べると手間がかかる。ヨーロッパ域内の主要路線にはファーストクラスが存在しないので単純に比較できないけど、ビジネスクラスでは2時間を越えるフライトでも冷た〜いサンドイッチがお約束。アジアで人気ダントツのシンガポール航空でもクアラルンプール便のファーストクラスは冷たい前菜っぽいミールだけなので、カタール航空など湾岸系エアラインの頑張りぶりが際立つ。逆に言うと、湾岸の乗客の間では”食”が機内サービスの中でかなり重要視されているって事かな。私個人は、と言うと、慌てるのがイヤなので短いフライトではいつも機内食はパスしてます。でも右の写真のメニュー、おいしそう!
お話しませんか?
カタール航空でダマスカスからドーハに飛んだ時、夫婦&娘1人のカタール人の家族連れと一緒になり、推定20代半ばのアバヤ姿の娘さんが私の隣の席へ。私の経験からすると、アラブ人の乗客は見知らぬ隣席のお客にほぼ100パーセント話しかける。人なつっこいのだ。その娘さんも DVDの貸出しサービス(DVDプレイヤーとリストの中からお好みのDVDを貸してくれる)で映画を観ていた私に「どこの国から来たの?」と早速話しかけてきて、ドーハまで楽しくお喋りした(途中で2人とも爆睡したけど)。彼女は夏、休暇で1ヶ月ほどエジプトで過ごし、今回はビジネスで1週間シリアに滞在したんだとか。彼女の足元には宝石店とブティックの紙袋が…
BMW、空港を突っ走る
ところで小さなドーハ空港ではエアブリッジの数が足りず、バスで飛行機のタラップに乗り付ける場合がほとんど。ゴージャスさが”売り”のカタール航空はロンドン便など長距離フライトのファーストクラスの乗客には バスではなく、BMWでターミナルとタラップ間を送迎している。短距離便の場合はさすがにBMWは出さないものの、ふかふかの大きな一人掛けソファーに優雅な化粧板の荷物置き場を備えたファーストクラス専用バスで送り迎え。ファーストクラスの定員は最大12人だけど、たとえ乗客が1人でも貸切状態でバスを出し、他のクラスの乗客と混ぜたりしない。
ドーハに着き、先述の機内で一緒だったカタール人の彼女もこのバスでターミナルまで一緒…と思ってたら、どうやらVIP会員にはフライト時間にかかわらずBMW送迎サービスがあるようで、彼女は「じゃー、楽しい旅を続けてね!」とにっこり挨拶するとBMWに消えて行った。しかも親子3人とも会員のようで、一人1台ずつお迎えのBMWがタラップ下に待機していた。かっこいい〜
ダイヤ入りのペンはいかが?
カタール航空の免税品カタログは他のエアラインより断然ぶ厚い。機内誌も厚いし、さすがお金持ちの航空会社、コストカットと無縁って感じ。機内販売の商品はだいたいどこのエアラインでも似たような物を扱うが、カタール航空では左の写真にあるようにショパールのダイヤモンド入りペン(710米ドル=約85000円)なんて超高額商品が積み込まれている。笑えるのが搭載路線がロンドン、パリ、チューリッヒ、ドバイ、アブダビ、ベイルート、クウェート、サウジアラビアというお金持ちのお客が多そうなルートに限られている事。こんな高額商品、誰が機内で買うんだろう、と思ってしまうけど、需要が見込めるから搭載してるんだろうし… 他にもエスカーダのイブニング・バッグ595ドル(約72000円)や、超高額商品じゃないけどipodも搭載していてカタール航空の機内販売カートは盛りだくさん。
ちなみに同じ月のガルフ航空の機内販売の最も高額な商品はeposというスイス製腕時計で495ドル(約6万円)、シンガポール航空の場合はフェンディの腕時計322ドル(約39000円)。カタールはスゴイ、と思っていたら全日空もスゴイ! 免税品のカタログこそ薄いけど、高額商品の品揃えはカタール航空よりはるか上だった。19万2000円ブルガリのダイヤモンド12粒入り腕時計やブレスレット時計以外にも14万ー17万円台の時計が3種類も。日本人がお金持ちなのか日本に往き来する外国人がお金持ちなのか…
そういえば以前エアラインにいた頃、サウジアアラビアのある大臣が機内で免税品をたくさん買われ、1回の機内販売で利用できるクレジットカードのウチの限度額を越えてしまい、機内販売担当者が「2度に分けてカードを切っていいですか?」と頼んでいた。買う人は買うのね〜、じゃなくて「買える人は買えるのね〜」が正解かな。
新郎はオモチャ状態
昨夏にアメリカ留学を終えて帰国したカタールの友人はお見合いの末1月に晴れて婚約し、現在は7月の結婚式に向けて大忙し。カタールではバレンタインデーを祝う習慣はまだほとんどないけど、婚約者同士なら結構大っぴらに一緒にこの日を過ごしていいらしく、友人ももちろんその新しいトレンドを楽しんだよう。
カタールでの披露宴は他の湾岸諸国同様、男女別々の会場で行なわれ、男性ゲストは巨大テント(500人も収容できる)、女性陣はホテルの大ホールなどに集う。新郎はテント内の大きな椅子に鎮座、男性ゲストの祝福を受けた後、友人や家族が踊るアルダという伝統的な剣の舞に加わり、最後はご馳走でフィニッシュ。花嫁さんも別会場で豪華なソファーに座ってやはり嵐のような祝福を受け、食事タイムまでバンドの演奏に乗ってみんなでダンスやお喋り。新郎は男性陣の宴の後、親しい友人や男性の家族と一緒に車で隊列を組んでクラクションや歓声をあげながら花嫁さんが待つ会場へと突っ走る。で、2人仲良くソファーに座って女性ゲスト達のフラッシュや祝福を受ける。女性陣の会場には他の男性は入れない(花嫁さんの男兄弟はOK)ので、まるでハーレム、いえいえ、新郎はオモチャ状態! お幸せに〜