お洒落が目的じゃないけど…
イスラム教徒がよく手にしている数珠・ミスバフの色は多彩。民族服ディシュダ ーシャやカンドーラ姿の紳士のポケットや右手にはたいていこのミスバフが。びしッとスーツを着こなした海外出張中の超国際派ビジネスマンでさえ指にこれを絡めている確率高し。先日都内でインタビューした世界有数企業のトップも椅子に坐っ
た途端、手にじゃらじゃらとオレンジ色の数珠が。写真はドバイのショーウイン ドーに飾られていた”箱入り息子達”。人前で毎日使う物だからプレゼントに最適かも…
ワイシャツ的ワンピース
写真左下の白い服の男性は私の好きなサウジの歌手アブドゥル・マジド・アブドゥッラーで 右下は"冬服姿"の同じくサウジ人歌手ハリド・アブドゥル・ラフマーン。サウジとカタールの"トーブ"はワイシャツを足元まで伸ばしたタイトめのシルエット。袖はボタン付きで、粋なカフスボタンをしてる男性をよく見る。日本の男性が夏の夜、よく仕事帰りに第一ボタン外したりしてるのに、あんな暑い国でびしっとワイシャツ風の襟を閉じてて平気なのかなぁ。
リプトンのティーバッグとは
以前、湾岸男性の性格、ファッション、ライフスタイルをちょっと意地悪に比喩した冗談があった。「カタールの男性はリプトン紅茶のティーバッグを頭に載せてる」とからかわれているのは
黒く長い房が背中に垂れている"イガール・ブ・ヘイト"の事。UAE男性の一部にもこの長い房は見られる。優雅な感じで私は好きだけど。カワイイと思いません?
あと、カタールのベドウィン出身の人達はもみあげや襟足の髪が長めなのが特徴。
白黒灰紺、ストライプ
カラフルな(と言っても全て寒色系)の"ディシュダーシャ"が見られるのはクウェート(サウジの一部も)。夏場は白一色だけど、砂漠からの風邪が冷たい冬になると
厚手の黒、グレー、アイボリー、紺、茶、ストライプ入りディシュダーシャが登場し、頭にかぶる白いゴトラが厚い布地になったり 赤白のチュマグに変わったりして
季節の移ろいを感じさせる。襟は一見学生の詰襟っぽく 袖にはボタンがない。写真は2005年、東京でクウェート伝統音楽を披露した音楽家バンダル・オベイド氏らで、彼らは差してないけど 実はディシュダーシャのポケットにはペンを差し込むためのミニポケットのようなペン専用の区切りがあって面白い。バーレーンのディシュダーシャの襟はほぼクウェートと同じだけど、袖はカフス付き派とカフス無し派に分かれる。温暖な為 一年を通して薄手の白だけ、そして頭には白いゴトラが定番。
さすがは香水好き
アラブ首長国の"カンドーラ"は丸い襟のゆるめのシルエットで白のみ、袖にボタンは無い。首から飾りの房が垂れていて、これは本来香水をしみこませる物らしく、さすがは香水好きのアラブ人…
若い人は髪が多くてかぶりにくいのか、ゴトラ無しだったり野球帽姿のミスマッチファッションも。
スカーフにしたいほど
かぶり物が一番カラフルなのはオマーンで、彼らが頭に巻いてる"マサル"は女性ファッションに応用できそうなほど柄が細かく色彩豊かだ。そしてどうやったらあんなにきれいに頭に巻けるのかな?
帽子バージョンもあり、上部が取っ手のように突き出した感じで折り曲げるのがオシャレなかぶり方。オマーンのカンドーラはUAE同様丸襟で香水用の房が付いている。
湾岸男性の民族衣装で真先に思い浮かぶのはオバQスタイルでは?それを基準のイメージとしつつ 頭に載せている物や襟、袖の形を観察すると その男性がサウジアラビア人なのか、クウェート人なのか、それともドバイの人なのかといった原則ルールが見えてきて面白い。日本製布地はスイス製、イギリス製と並んで高級品として人気がある。
ステテコみたい
彼らの多くは民族衣装の下にステテコ風の七分丈パンツ"ムカッサル"を穿いている。強風で上衣の裾がめくれ上がった時にちらりと足元から覗くけど、"ステテコ"だからあまり色気は無いような… 下着が透けて見える人はムカッサルを穿いてない為で、オマーンで下着の格子模様が透けた人の後ろを歩いていた時は目のやり場に困ってしまった。
サウジ男性は季節に関係なく赤白柄の"チュマグ"を好んで頭に載せるが カタールでは白い"ゴトラ"が主流。チュマグの方が布地が厚く、これを酷暑に載せて涼しい顔してるサウジ人がますます不思議な人々に思えてしまう。
湾岸紳士ファッション考
MEN'S FASHION in GCC
ヨーロッパブランド勢、頭で頑張る
ダンヒル、バレンチノ、フェレなど日本でも紳士御用達ブランドがゴトラやチュマグの世界でも健闘している。私が覗いたクウェートのショッピングモールにある洒落たお店では輸入物のバレンチノのゴトラが16ディナール(約6500円)、チュマグはその厚みの分だけ(?)ちょっと高くて20ディナール(約8000円)で売られていた。ちゃんとギフト用の箱に入っている。一見どれも同じ柄に見えて、実は細かいパターンの違いがあり、そのお店ではバレンチノだけでも2種類のデザインのゴトラと4種類のチュマグを扱っていた。フェレもバレンチノと同じ値段で各種デザインあり。
ゴトラやチュマグも帽子のようにサイズが分かれていて、主流は55−58インチ。もっとも帽子と異なるのは頭の大きさでサイズを選ぶんじゃなくて身長とのバランスがポイントだって。「170cm代の人なら55か56インチ、大男なら58インチでしょう」とエジプト人の店員が教えてくれた。友人の話によると、買ったゴトラはそのまま使わず、一旦しばらく水に浸し、乾かしてアイロンを掛けてから使うんだとか。
オーダーメイドはどう?
ビジネスマンがシャツを仕立てるのと同様、ディシュダーシャも簡単に仕立てられる。布地を売るお店で仕立まで頼めるかどうかは営業許可に規制があるのでマチマチで、ダメな時は仕立専門店(たいていはインド人のテーラー)の出番。上質のディシュダーシャ布地の主流はヨーロッパ製と日本製で、見本に大きく"Made in Japan"と書いてある。布地専門店で私が見せてもらったシングル巾の日本製布地は1m当り定価2.5ディナール(約1000円)、ダブル巾のスペイン製布地は1m当り定価5ディナール(約2500円)。中肉中背の人ならシングル巾で5m、ダブル巾なら3〜3.5mの布地が必要。仕立代も含めて1万円前後でパリッとしたオーダーメイドの正装ができるなんて 日本でも湾岸でも女性には無理な話、いいなぁ、紳士は…